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Interview & Profile

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 まず、なぜオンラインでレッスンを公開することにしたのでしょうか?

山下Topo洋平(以下Topo) 今は2020年の7月。新型コロナウィルスの影響下の真っ只中にあるわけですが、4月からライブも無くなりレッスンもほとんどがキャンセルになってしまいました。仕事ゼロです。

そんな中、僕はライブ配信をはじめオンラインで様々な模索を始めました。

その流れで5月にYouTubeで不特定多数の方に向けたケーナのレクチャー配信を行ったんです。

その企画に一定のレスポンスがありまして『次は生徒さんに指導しているところが見たい』という意見をいくつかいただきました。

「あ、そんな需要があるのか、じゃあやってみようかな」というのが直接的なきっかけです。

加えて、僕は数年前から京都で教室を持ってるのですが、そこでは何人もの生徒を一日かけて順番にレッスンするので自動的に公開レッスンのような形になるんです。それがすごく良くて、生徒たちがお互いのレッスンを目撃することで思いがけない相乗効果があるんです。その経験も大きかったですね。

 

​― YouTube配信のような無料で不特定多数に向けたものではなく、有料(500円)チケット購入者を対象としたサービスにした理由は?

Topo 生徒のプライバシーもあるので、不特定多数に向けた配信は無理です。チケット購入者に限定された配信にはなりますが、もちろん生徒たちには配信許可をもらっています。

また、ワンコインとはいえ有料にすることでお互いに緊張感と責任感が生まれることが大事だと思っています。

僕もより良いレッスンをしたいし、見学する人も何かを掴もうという姿勢と意欲を持って見て欲しい。

 6月からテスト配信を続けてきたそうですが?難しい点などありましたか?

Topo はい。生徒にオンライン見学者になってもらってテストを重ねてきました。3~4台のカメラを使って生徒や僕のアップも織り交ぜて、レッスンの大事なところを見逃さないようにスイッチングしながら配信します。これはこの期間中、無観客ライブ配信のために手に入れた機材とノウハウが活きています。

難しいのは、それぞれの視聴環境によって音質や画質が変わってしまうところです。こちらが良い音で配信しても受け手がスマホの内蔵スピーカーではどうやっても良い音にはなりません。なるべくイヤホンやヘッドホンで聴いて欲しいですね。アーカイブはそれなりに良いクオリティで残せているので、もし生配信で聴きづらかったらアーカイブを見てもらえば問題はないのかなと思います。

 売り上げは生徒さんと50%ずつ折半にするとか?変わったシステムですね?

Topo はい。例えば単純に言うと、対面で行う個人レッスンを配信してオンラインで10人が見学したとすると、500円×10人で5000円になります。それを僕とレッスンを受けた生徒とで50%ずつ分配します。すると生徒は2500円のキャッシュバックを受けることになります。20人見てたら5000円キャッシュバック。つまり1レッスン無料です。

すごくないですか?実際どれぐらいの人が見てくれるかはわかりませんが。

僕は生徒からレッスン料をいただいているので既にビジネスは成立しています。オンラインで得たプラスアルファを生徒と山分けするということです。

 すごいですね。生徒さんにとってはお得!

Topo そこが肝です。僕は、実際にお金と時間を使って生の現場に足を運ぶという行為は「尊い」と思うのです。

今回、新型コロナウィルスの影響でライブ配信を沢山してつくづく実感しました。ライブにせよレッスンにせよ、文化は生の現場で生まれています。そして文化は発信者だけではなく、受け手がいて初めて成り立つものです。僕たち発信者は僕たちだけで文化を作っているのではなく、生の現場に足を運んでいるみなさんと一緒に作っているのです。

今、コロナで文化が壊れかけています。その文化を守ろうと思ったときに、僕のような作り手や発信者だけが守られるのではなく、生の現場に足を運んでくれる人たちも守られるべきではないのか、と思ったのです。

一方でオンラインには当然限界がありますが、遠く離れた人と情報を共有できるという良い部分もあり、求めてる人が一定数いることもわかりました。その声には純粋に応えたい。

この期間中、オンラインをオフライン=生の現場の補強剤として活用できないかずっと考えていました。その結果、この仕組みを思いついたのです。

 なるほど。オンラインの需要をオフラインに還元するわけですね。熱い思いから生まれた画期的なシステムだと感じました。生の現場を守るということは、オンラインレッスンの配信はしないのでしょうか?

Topo 今言ったことと反するかもしれませんが、オンラインレッスンも配信して見学者を募ります(笑)もちろんその収益も生徒と折半します。生の現場に足を運んでくれた生徒を守るという理念がこのシステムの基盤になってはいますが、オンラインレッスンを配信することは技術的に簡単だし、そこに求める人がいて、その結果見学者と生徒と運営の三者にとってプラスになるならばやらない理由はありません。

 このシステムはコロナ期間中だけのものでしょうか?

Topo いいえ。恒久的なシステムとして運用していきたいと思っています。もちろん需要が無ければ続けてはいけないですが。こんなこと誰もやってないのでどうなるのか全くわかりませんが、大切なのは自分の信念に向かっていくことだと思っています。すなわち信念を具現化できるであろう仕組みを考え、インフラを整備し、環境を作ることがその第一歩です。これから現実で運用が始まります。成功させたいです。

山下Topo洋平

ケーナ奏者。さらにサンポーニャ、ギター、ヴォイスを自在に操り作曲作品も多数。19歳でデビュー。南米に渡り、現地でライブやレコーディングに参加。日本においても様々な音楽家と共演、これまでに9枚のリーダーアルバム、2枚のDVDをリリース。アルバム『Tierra』でビクターよりメジャーデビュー。「単なる民族音楽という枠を超えた普遍的な魅力に満ちている」(CDジャーナル・レビューより抜粋)、「南米の素朴な笛ケーナを様々な笛の美質をミックスした普遍的な楽器に変貌させる奏者」(管楽器専門誌「Pipers」より抜粋)と評されている。

2015年には自身のバンド「Tierra Cuatro」が南米ツアーに招聘され、現地の聴衆に熱狂的な称賛を受けた。

2018年より洗足学園音楽大学ワールドミュージックコースの講師に就任。日本の音楽大学で初めてケーナとサンポーニャおよび南米フォルクローレの講師となる。

​ホームページ

http://topoyohei.com/

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